
『葬送のフリーレン』第9話「断頭台のアウラ」で、フェルンとリュグナー、シュタルクとリーニエの戦いが同時に進む場面。そこで流れるBGM「Zoltraak」を耳コピしました。
作曲はEvan Call(エバン・コール)さん。オリジナル・サウンドトラックではDisc 2の1曲目に収録されています。原曲通りの耳コピに加えて、和楽器に置き換えたアレンジも作りました。
曲を聴く
曲は前編と後編に分かれています。目的から選んでください。
ゾルトラークという名前について
ゾルトラークはもともと魔族の「人を殺す魔法」でした。それを人間の魔法使いたちが長い時間をかけて解析し、いまでは誰もが使うありふれた攻撃魔法になっている。特別だったものが、時間の流れの中で日常に変わっていく。この作品を貫いている話が、この魔法の名前ひとつに畳み込まれています。
第9話は、その名を冠したBGMが、まさに魔法をぶつけ合う戦いで鳴る回です。
楽器編成
耳コピの譜面は、この編成で起こしました。
- 女声(Fmale)
- ヴァイオリン
- ヴィオラ
- チェロ
- コントラバス
- リュート
弦五部に女声、そこへリュートが一本。この編成は、Evan Callさんが語っている作曲の方針とよく重なります。
インタビューでEvan Callさんは、戦闘曲でエレキギターやシンセサイザーを使わず「オーケストラ+民族楽器がメイン」で組んだと述べています。また、フリーレンが生きてきた千年という時間を表現するために、レベックやヴィオールといった古楽器を意図的に取り入れたとも語っています。現代の楽器では出ない音色で、懐かしさと時間の距離を出すためです。
Zoltraakでも、この考え方はそのまま効いています。弦五部という近代オーケストラの骨格に、撥弦の古楽器が一本混ざる。中世的な世界の手触りと、戦闘曲としての推進力が、同じ譜面の中に同居しています。
女声のパートについて
譜面で「Fmale」と書いているパートは、原曲ではドイツ出身のヴォーカリスト、Alina Lesnikさんが歌っています。歌詞のある歌ではなく、楽器のひとつとして扱われる声です。
この作品の音楽で声が使われるとき、それは前に出て主張するというより、弦の層のいちばん上に薄く乗るような使われ方をします。Zoltraakでも、女声は器楽の一部として編成に組み込まれています。
冒頭の作り
テンポは ♩=144。走り出すほどではなく、止まってもいない速さです。ふたつの戦いが並行して進む場面なので、どちらかに寄りすぎない速度が選ばれているように感じます。
曲の入りは、女声とリュートだけです。弦五部はまだ休符で待っています。女声には p が置かれ、長く伸ばす音を静かに置く。その下でリュートが十六分音符を刻み続けます。
戦闘シーンのBGMとしては、始まり方はかなり静かです。音量は小さいのに、リュートの刻みだけが止まらないので落ち着かない。この組み合わせが、戦いが始まる直前の張りつめた感じを作っているのだと思います。
和楽器アレンジについて
お正月に合わせて、Zoltraakとその前奏部分を和楽器風にアレンジしたバージョンも作りました。結果として、こちらのほうが多くの方に聴いていただいています。
置き換えがうまくいった理由は、原曲そのものの成り立ちにあるのかもしれません。この曲はもともとオーケストラと民族楽器の組み合わせでできています。民族楽器の枠にどんな楽器を入れるかは、曲の骨格を壊さずに差し替えられる余地がある。ケルト系の古楽器が入っていた場所に和楽器を置いても、曲として成立するのは、そもそもそういう作りだからではないかと考えています。
楽譜の入手先
楽譜PDFの配布は終了しました。譜面は上の楽譜再生動画でパートごとの動きを追えるようにしています。全パートが同時に流れるので、どの楽器が何をしているかは紙の楽譜より分かりやすいかもしれません。
関連する曲
同じ『葬送のフリーレン』の耳コピ楽譜はこちらにまとめています。舞踏会BGM、結界を破るBGM、アウラvsフリーレンBGMなども公開しています。
YouTubeチャンネルでは、ほかのアニメ・ゲームBGMの耳コピ楽譜も公開しています。
終わりに
ゾルトラークは、解析されて誰にでも使えるものになった魔法です。耳コピという作業も、鳴っている音を分解して、譜面という読める形に置き直すことなので、少し似たことをしているのかもしれません。最後までご覧いただき、ありがとうございました。
参考
- アニメ『葬送のフリーレン』第9話「断頭台のアウラ」
- Evan Callインタビュー(アニメイトタイムズ)— 古楽器の使用と戦闘曲の編成について
- サントラ千夜一夜 第288回「高みをめざす想い 〜葬送のフリーレン〜」(WEBアニメスタイル)— 収録位置とヴォーカルについて

